剣町柳一郎の日々のつぶやきや愛読書、歴史エッセイなど楽書きしていきます。

金沢城下町細工人譚「かざりや清次」

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「その迷よい子札を、わしに彫れというのか」 清次は小さく笑った。
「嫌ならいいんだよ。ちょっと思いついただけだよ。 無理にすすめはしないから」
きてと顔を見合わせながら、鈴が言った。「人に利用されるのが嫌と思ったら、やはり
そんなものを彫るしかないかもしれないな」細い声しか出なかったので、言った清次が驚いた。
「おまえさん、自分の好きなものを彫ればいいじゃないの。わたしと母さんが町で売り歩くから」
鈴はそんな弱気の清次を叱るように、目に力をこめて言った。
そして、裁縫箱から簪を取り出して 「こんなすてきな簪をつくれるんだから…」と、明るく笑った。
行灯の明りが、小さな光をまぶしく返した。「かざりや清次より」

 城下町金沢の御一新前後に生きる細工人たちの物語。

 「かざりや清次」は白銀細工師、「針巻師勇三」は加賀毛針をつくる者、「茜龍の与助」は
加賀絵紋師、「念仏者勘七」 は箔師などの話。
 今日に似て、 明日が見えない暗い時代状況にあって、彼ら五人の男たちはどのように生きたかを、
北国の四季を背景に追いかけた歴史・時代作品群。二〇〇六年度泉鏡花金沢市民文学賞受賞作。

 金沢城下町細工人譚「かざりや清次」

二〇〇六年七月三十日発行 定価1,260円(税込み)
完売となりました。

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