この田舎ではオウマトンボとは、
図鑑で見るオニヤンマのこと。
能登ではオコニと呼んでいた。
なかなか素早くて捕まえることが出来なかったトンボだ。
一番大きくて、黒と黄色のだんだら模様が好きだった。
あの大きな、透きとった羽根。
あの羽根を透かして、爽やかな夏が見えた。
オスは剣一といい、メスは剣二という。
尾の先の表情から、そう呼んでいたのだろう。
とりわけて、翆色の目玉は宇宙を覗かせてくれた。
海が多い地球にも似ていると、思えたものだ。
そんなオウマトンボが我が家の網戸に止まっていた。
まだ羽化して間もないのか、それほど大きくない。
しばし、見とれていた。裏側から。
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昔、小川があったところを記憶しているのか、
それも何代もの世代を超えた記憶だ。
庭や小道をよく行ったり来たりして飛ぶ。
オウマトンボは、少年にとっては勲章のような存在だった。
夏休みという戦場で勝ち取ったものとして、
夏の記憶は、翆色の目玉に写っている。