友人Tさんの琵琶演奏を聞きに行く。兼六公園の近く、
元Y男爵家の別荘があったところだ。夕暮れと同時に、
ボロロンと始まる。明智光秀、梁塵秘抄などを歌い奏する。
なるほど、平家武者の亡霊が出て来るような気がわかる。
怪しげな空気が漂うのは、他の楽器になれている現代人だからだろう。
当時は、琵琶は貴重で大切な楽器だったと思われる。
耳なし芳一を訪れた平家武者の亡霊の心がよくわかる。
自分たちの過去を聞きたいのだ。
懐かしさと哀しさが入り交じった物語を。
Tさんは薩摩琵琶、筑前琵琶と変えて奏してくれた。
庭の緑がだんだん闇につつまれ、あたりに亡者の人の息遣いがしてくる。
まさに亡霊を呼び起こすための、過去を呼び出す器、琵琶。
演奏後、琵琶を見させていただくと、美術工芸品のような美しさを
漂わせていた。いいものだと思う。

琵琶全体