しばらく、非日常空間に滞在していた。
木々の匂いを嗅ぎに庭にでた。
冬の夜空は寒さと引き換えに、宝石箱を引っくり返していた。
雑木林にかかる星たち。
見上げると、オリオン座の右上にスバルが輝いている。
反対側にはいちばん明るいシリウス。
四百十年前の光が今夜、届いた。古名六連星。
関ヶ原の戦が終わって二年後の光が千六百七年経って、
ようやく地球に、当地についたのだ。
最初の朝鮮通信使、家康が駿府に移った年。
慶長十二年のことだ。
気が遠くなるような歳月の存在を身近に教えてくれる星の光である。
賢治の「夜鷹の星」はどれだろうと探す。
「自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、
しずかに燃えているのを見ました。すぐとなりは、カシオピア座でした。
天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。
そしてよだかの星は燃えつづけました」と書かれている。
どうも、夜鷹の星は秋の北天に見えるらしい。