雨が降る。六月の雨に紫陽花が似合う。
 寝床の中で聴く雨音が好きだ。
 中也の詩をつい思い出す。
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 またひとしきり 午前の雨が
 菖蒲のいろの みどりいろ
 眼うるめる 面長き女
 たちあらわれて 消えてゆく
 たちあらわれて 消えゆけば
 うれいに沈み しとしとと
 畠の上に 落ちている
 はてもしれず 落ちている 

 三好達治の詩もいい。
 雨に濡れる紫陽花を詩ったものだ。
ajisai
 
 淡くかなしきもののふるなり
 紫陽花いろのもののふるなり
 はてしなき並木のかげを
 そうそうと風のふくなり
 
 時はたそがれ
 母よ 私の乳母車を押せ
 泣きぬれる夕日にむかって
 轔々と私の乳母車を押せ
 赤い総ある天鵞絨の帽子を
 つめたき額にかむらせよ
 
 旅いそぐ鳥の列にも
 季節は空を渡るなり
 淡くかなしきもののふるなり
 紫陽花いろのもののふる道
 母よ 私はしってゐる
 この道は遠く遠くはてしない道

 懐かしい詩、高校の国語の教科書に載っていた。
 紫陽花は淡く哀しいと、達治は言っている。
 淡くかなしきもののふるなり、雨は淡く哀しい降るという。
 生きる不安を母への慕情に託した哀しみの歌。
 紫陽花の咲く空間は淡い紫色、哀しい道なのである。