「傍え聞き」長岡弘樹著.

表題の「傍え聞き」「899」「迷い猫」「迷想」の

どれを取り上げても佳品であった。ネズミ捕りを仕掛けるようにして、

ネズミを追い込むようだった。四作品とも同じ手法が取られている。

ミステリーは長編の方が面白いと思っていたが、短編でも佳品が

作れることを新たに知った。主人公の心にあるものを引き出して、

ストーリー運びに使っていく。その小気味の良さを上手に演出している。

初めて読んだ作家だったが、某政治家が人文系は大学に良くないというが、

そのような文学無用論はありえないことを教えてくれる。

彼の作品を読めば人の情けを知り、機敏さを受け止め、人は成長する。

人の心の広さは数式ではでてこないし、深さも測れない。

小説はいわば時代の科学とも言えよう。

道徳以上に道徳である。