暑くなったが、緑が優しく、陰に入ると柔らかだ。

久しぶりで、鏡花の生まれた下新町を歩く。暗がり坂を経て、主計町に出る。このあたりの路地は鏡花が小さい頃に歩いた道とは、当然に変わっている。ただ大きなケヤキは三百年と育ってきたので、見下ろす世界は似たようなものだろう。東の廓界隈は観光客で賑わい、どんどん新しい客ができているようだ。それゆえ、橋を渡らずに、大橋まで桜の木の影を選んで歩く。紅殻色に塗られた物語が残っているが、観光用というふうだ。一ヶ月ほど前から、インスタを始めた。読書で繋がり、若い人の読んでいる本を四、五冊買って、今読んでいる。言うが優しいが、感想を書くのは難しい。鏡花の世界は曼荼羅だ。友禅の着物を広げたように彩られている。彼ら、彼女たちが読んでいる本はいかがなものだろうか。文体や言葉にやや戸惑いを覚えるが、なるほどこれが若い人の本ワールドかという気にもなる。テレビのドラマの展開そのものものでもある。分かりやすい。テンポが早い。主人公が自分自身に投影される。しばし、そんなことを思いつつ、裏路地に遊ばせてもらった。