「かりがね点のある風景」中村なづなさんの詩集を読む。

詩人は今年、86歳。歳には関わりなく、

言葉に優しさと強さを感じさせる、私が好きな詩人だ。

その一編、「彼岸にシベリアの奥からの雪が降る。

また こんな日に 枯れた鬼芒を折ってばら撒いたような葉書がきた。

もう字なんか書きたくない という。

(中略)ここに届いたからには春の風になるはがき」

あるいは、「背負うものとうに忘れたなめくじり

誰かの句を思い出し しわしわと笑う」

本当は蝸牛よりも蛞蝓の悟りが深いかもしれないと

作者は思ったのだ。

ほんの詩の一例と部分だが、なづなさんの詩には叙情と力がある。

詩人は自分のために書くから、詩は読んでも面白くないと思っていたが、

どっこい、なづなさんの詩は他人にも読ませる力がある。

引き付けるパワーは、時間を積み重ねた者だけに許されたものと言える。

中原中也や三好達治の詩とスタイルは違う現代詩だが、

同じように、ハッとさせる言葉が存在する。

失礼ながら86歳という高齢者にして、心の裡に子供が眠っている。育っている。

惜しむらくは、私家本であるため本屋にはない。

図書館で読んでいただきたい。

なづな詩集