春の午後に、ピンク・フロイドを聞く。「原子心母」はロックだけれども、なんとも言えない世界をもたらしてくれる。なんとも言えないとは、不遜な言い方になってしまうが。クラシックでもジャズでもなく、ロックにしてはクラシック風である。リズムよりも、曲全体のイメージが押し寄せてくる。若い頃、千駄ヶ谷体育館で初来日のコンサートを聴きに行った。少ない給料からの出費だった。「原子心母」を聞いたのは、コンサートの前だったのか、あとだったのか、記憶にはないが。ある時代のヒトコマにしかすぎないが、今でも、その旋律イメージが頭に残っている。

ジャニスやリックネルソン、デオダードもよく聞いた。

ジャニスの『サマータイム』、リックネルソンの「ヘンリー七世と六人の妻たち」がお気に入りだった。当時は、新宿、吉祥寺でジャズやブルースとともに、よく聞いたものだ。

あの頃は、本は一冊も読まなかった。植草甚一を除くと。歴史もしらないし。夢中になるということはラーメンを腹にかきこんでいるみたいな時間だろう。その時は木の全体を見るのではなく、葉のざわめきや風に触れる枝を見ていたようだが、それはそれでいい。その時期にしか、そんな見え方が出来なかったのだから。そのタイムを逃すと、見えなくなってしまうのだ。

夢中になるって、そんなものかもしれないね。