ヤノシュ・オレイニチャクさんの演奏会に出かけた。
ショパンといえば、このピアニストの名が出る。
18歳で第8回ショパンコンクルールに最年少に入賞。
映画「戦場のピアニスト」の演奏や迫真の演技を手で見せてくれた人である。
休憩時に、プロデューサーが彼にインタービューした。
頭に覚えているのは、メモをとっていなかったのと耳が遠くなったせいか、
「ショパンはテクニックではなく、心地良う弾く事が大切」「赤児のショパンは
ピアノを聞いた時、泣きました。笑わずに」「ホットチョコレートが好きだった」と、
サロン風のトークしか覚えていない。このトークはオレイニチャク自身の願いだったらしい。
彼はアンコールにも三、四度応えてくれた。
例のノクターン第二十番遺作は長い指での情感あふれる演奏。
鍵盤をなでまわすような軽いたっちと力強い打ち方、同じショパンの曲の数々を
、その多様さで弾き聞かせてくれる、二時間だった。
指の腹を感じさせる弾き方であったと思う。
なるほど演奏家によって、曲はこれほど違うのか。
優しいメロディのショパンだけでなく、力ある個性を披露してくれ、
かのヴィルヘルム・フルトヴェングラーの言葉「偉大なものは単純だ」を思い出す。
芸術は単純にして、抽象的なものほど奥が深く、飽きない。
帰り途、Kさんにばったり遭う。「奥さんは?」と尋ねると、
「誘ったけれども、以前に聞いた演奏を大切にしたいと言っていました」
と答えられた。彼女はよくわたしにノクターン第二十番を弾いて聞かせてくれる人だ。
今回、来なかったのは、七年前にオレイニチャクさんの演奏を
東京や横浜にまでわざわざ聞きに行ったので、
その時に聞いた「音の記憶」を大事にしたいということだろう。
いいことだと思う。考えてみれば、人は記憶の海に浸っている生き物だ。
ショパンの海は蒼くて、どこまでも深く透き通っているようだ。
それに、物を持つよりも心に蓄えられるもののほうがよい。
Kさんのブログを紹介する。
http://ameblo.jp/chopinparis/theme-10100924461.html
ショパンをこよなく愛する彼ならではのコメントをぜひ読んで欲しい。