田中優子の「カムイ伝講義」ちくま文庫を読んだ。
優れた一揆論だった。田中さんは原作者・白土三平と会い、
話もしてうまく、舞台となる1650年頃の農村、
政事や経済、階級、生産をまとめあげている。
抜忍と呼ばれる忍者、元武士、豪商人、代官、あらゆる登場人物が
絡み合って作り出す世界を漫画で描いた「カムイ伝」。
1960年代、少年の私も夢中で読んだ、見た世代になるだろうか。
綿花を育てるシーンや豊作の時期のシーン、筵旗を手に一揆を企てる百姓たち。
町の欲張り商人を襲うところも鮮やかに蘇る。
田中氏は学生の講座に「カムイ伝」を取り入れて、
江戸という時代を学ばせている。それゆえ、わかりやすい文章で書かれている。
「カムイ外伝」も良かった。
楽しい授業だろうな、学生も得難いものを習得したと思う。

もう一冊。山本益博氏の「桂文楽の世界」中公文庫。
文楽のしたたかさと彼の落語一筋の根性をうまく得ている。
「私はその高座に一回で魅了されてしまった」と言い、
大学の四年間、師匠を追いかけた物語だ。加えて、
圓生、志ん生、正蔵らを見つめ、江戸から続く噺をまとめている。
それぞれの上手さを発見し、言い得ている。
持ちネタの少ない文楽、真面目な圓生、一期きりの志ん生の違いを、
明治の落語家、三遊亭圓朝から各噺家と共に追いかけている。
系統立てて理解できる。なぜ彼が文楽師匠に惚れていったがよくわかる。
噺を聞き分けると、人と時代が浮かび上がってくる。
落語の面白さは芸術だと、つくづく思う。
当時、池袋にも演芸場が東口の喫茶店が並ぶ通りにあったが、
料金が高いので通り過ぎ、「ネスパ」か、「南蛮」で
コーヒーを手に、友人と語るだけだった。
新宿にもアートシアターの横に寄席があった。
今になれば、ライブをもっと聞いいておけば良かったと思う。

庭にやってきたキジバトの夫婦。わかりますか、中央右です。
キジバト