笹寿司を食う。
いつも金木犀が香り出す頃、獅子が舞う。造り物が動く。
T町の秋祭り、ほうらい祭り。
昔から、秋祭りには炊いたご飯に地元の酢を使い、
笹を二枚使って、木の箱に入れて、一夜だけ重石を乗せて押す。
笹は腐りを防ぎ、毒を遠ざけるらしい。下に鯖や鱒、シイラや大根を敷く。
笹の香りがして、以前なら十個ぐらい食えたのに、
今は三個か、四個食えば、腹がいっぱいになる。
ゼンマイの煮物、ベロベロと呼ぶ寒天。かまぼこ、だし巻き。
鮎の塩焼き、そのほか諸々。
獅子が、造り物が町内の路地を練り歩く。
テレビが出て来た頃は、まだ秋祭りと
大相撲の観戦とそのぐらいが楽しみだった。
もう秋祭りは行かなくなり、今日は友人と本と映画の話をして来た。
同じ趣味の友人が少しづつ少なくなっていく。
笹寿司は、家人が持って来た。金沢では、
某会社が売り出しているが、手作りの笹寿司は
笹と一体になった味が違うと言って良い。
祭りの味がしない笹寿司はどうも
違う寿司のようだ。残念ながら。
それだけ、形だけでは本物に近づくことが出来ないと言うことだろう。
写真は造り物。龍。