なかにし礼の「夜の歌」を読んだ。
感性と理性で読む小説だった。
心を見せるという意味では、彼の「遺書」のようだ。
フィクションも入っているが、事実が多いようだから、
渾身で書かれた遺書とみた。ゴースト、母、姉、兄、
父の関わりの中で、満州と昭和の時代が交差していく。
歌詞づくりの青春と満州での幼年時代が交互に流れ読み取れる。
成功した昭和40年代の日々には、名を知っている歌手が出てきたり、
東京の当時の著名なディスコや人名が出てくる。
赤坂は小生が通った事務所があった場所でもあり、懐かしかった。
彼から、仕事で原稿をもらったこともある。
現実と夢が出入りし、言葉が現実となっていく作詞の世界。
そして、歌詞から小説へと、なかにし礼は成長していく。
イントロは読みにくさがあったが、それを通り過ぎると
グッと惹きつけられる内容になる。
なるほど、小説にはこの「凄まじしさ」が必要なのだと
思った。戦争でごまかした人生を送る兄が象徴しているように、
それは作者の裏側と同様であり、中西家の血筋であった。
なぜか、彼に会いたくなった。
一去年の暮れ、某病院で講演があったので、応募したらもう
締め切られて聞けなかった。